回避性愛着障害とは、人の性質を愛着の観点から分析してカテゴリー分けしたもの(それを「愛着スタイル」と呼ぶ)の中の一つで、大まか言うと
対人関係において、回避(避けようとする)傾向がある人のことをそう呼びます。
まずは、愛着スタイルについて簡単に紹介し、その中の回避型という特性について知っていこうと思います。
愛着スタイルの分類
愛着スタイルにはまず大きく「安定型」と「不安定型」の2つに分けられます。
さらに「不安型」の中で、「不安型」「回避型」「恐れ・回避型」の三つに分類されます。
本記事では、「不安型」の中の「回避型」の特徴や発現要因について記載します。

回避型愛着スタイルの特徴
回避型愛着スタイルには大きな3つの特徴があります。
- 自己開示が苦手、他人との間に親密な関係を避ける
- 感情や情緒を抑える傾向がある
- 無気力、無関心、投げやりさがある
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
1. 自己開示が苦手、他人との間に親密な関係を避ける
回避型パーソナリティを持つ人は、基本的に一人で過ごしたいと思っており、自分の中心を明かさず、他人の好意や親しみにも素っ気ない反応をしがちです。
しかし、それは他人と過ごすことに興味がない訳ではなく、過ごすことに苦痛と労力が伴ってしまうため、このような行動や反応になっています。
また、自己開示が苦手なのは、下手に弱みを見せれば、非難される、余計に酷い目に遭わされるという不信感があるためです。
だから問題が起きても、自分の力だけで解決しようとしてしまいます。
他の愛着スタイルや、人間の行動全体に言えることかもしれませんが、
逃げることで自分を守ろうとしている
ことに強い傾向がある愛着タイプです。
2. 感情や情緒を抑える傾向がある
回避型は、他人と争ってまで自分の考えを主張すると言う気持ちに乏しい傾向があります。
これは、そこまでして守らなければいけない絆が存在していない感覚があるからと言えます。
また、回避型は感情表現を押さえがちです。特に喜びや関心といったポジティブな表現が強く抑えられます。
その結果、自分の気持ちや感情が曖昧になってしまいます。
3. 無気力、無関心、投げやりさ、めんどくさがる
回避型は、自分のことなのにどこか他人事、生きようとする根本的な意欲が持てないので、目先の快不快や興味に、その場しのぎの救いを求めようとします。
これは、主体性を奪われた結果であり、自分に対する責任を放棄している状態で、逃げることで自分を守っている結果です。
めんどくさがりも同様に、興味あること以外に時間やエネルギーを割くことを極力避け、現状維持が一番安全というリスク回避の思考により、めんどくさいという感情に繋がっています。
また現状を変化させるには、たくさんのエネルギーを必要としますが、回避型は回避という特性上、エネルギーを普段から使わないので総量も多くありません。
※心のエネルギーは程よく使うことでさらに生み出させるとされています
エネルギーが乏しいので、現状に不満があっても変えようとしない、現状に耐えた方がマシという思考になってしまいます。
回避型の要因
回避型の要因は、遺伝的ではなく後天的な要素が大きいと言われています。
遺伝要因が1/4、環境的要因が3/4、幼少期の親との関わり合い方が非常に大きい影響を与えており、成人後も回避の傾向が出る場合もあります。
生存的な適応プロセスにより生まれた回避型愛着
例えば、以下のような状況で回避が生まれるとされています。
- 子供が親に世話や関心を求めても無視をし、期待が裏切られる状況が繰り返される
- 支配的な親に見張られ、罰せられ、強いられることが長く続く
本人の意思や気持ちが無視され、本音が言えずありのままの気持ちを吐露することができない状況に置かれて来た結果、愛着はさらに不安定になり回避傾向を示しやすいです。(「回避」に加えて「不安」傾向も示しやすい)
自分の意思を認めてもらえない状況に対して「回避」という反応が起きるのは、本当の感情や意思を消してしまうことによって、葛藤や傷つくことを逃れようとしているためです。
人にとって、傷つくことを避けること=鬱状態を避けることを意味します。
人は傷つくと苦痛だけでなく、無力感や自己否定に囚われてしまいます。人にとって愛着を失うことは大きな苦痛です。
「回避」という行動はそういった苦痛を味わう前に、愛着から逃れようとし続け、繰り返すことで強められていった結果です。
これは幼少期の頃だけの話だけではなく、親元から解放された後も虚無感や無気力、無感情といった症状で続くことがあります。
長年続いた子供時代の影響は、その人の行動、思考に深く組み込まれて、その後の人生にさらに持続的な作用を及ぼし続けても不思議ではないと言われています。
また、社会に出てからも、本当は人を求めながらも人を素直に信じることができず、社会不適応や生きづらさを抱えることに繋がってしまいます。
後天的な回避反応
持続的なストレスによって回避反応が身についてしまうこともあります。身近なものでは失敗体験、傷つく体験で回避のきっかけとなります。
中でもいじめや仲間はずれは愛着にダメージを与えやすいと言われています。
しかし、後天的に回避型の愛着スタイルに変わるということは、逆を言えば、回避型から安定型への移行も可能だということを示しています。
まとめ
・回避性愛着スタイルとは、人の性質をカテゴリー化した考え方の1つ
・回避型はカテゴリー中の思考傾向として、「逃げる(回避)」することで、自分を守ろうとしている
・そっけないのは、他人に興味がないから起きる態度ではない
・過去の不信感や主体性が奪われた結果、生存本能が自分を守るため「回避」を選択しているに過ぎない
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